日本人の知り合いに「シンガポールの“プラナカン料理“と“ニョニャ料理“って何が違うの?」と聞かれた私は答えに窮してしまいました。
旅行雑誌やガイドブックでもよく目にするのですが、確かに「プラナカンとニョニャは同じものなのか?それとも何か違うのか?」とよく考えてみると分からなかったのです。
今回、私は実際にシンガポール人にどう違うのか質問してみました。その結果、2つの興味深い答えが返ってきました。この記事では、プラナカン文化とニョニャ文化の関係を整理しながら、その微妙なニュアンスを紹介していきます。
- シンガポールで妻・子供2人・ヘルパーさんの5人で暮らしています。
- 現在、現地採用でシンガポール勤務
- 過去に駐在員を経験
結論
あるシンガポール人は、「プラナカン文化とニョニャ文化は同じもの」と答えました。
また別のシンガポール人は、「ニョニャはプラナカン文化のなかでも特に料理を指すことば」と答えてくれました。
この整理では、先の「“プラナカン料理“と“ニョニャ料理“って何か違うの?」の問いの答えは「同じもの」と答えるのがよさそうです。

英語版Wikiでも、Peranakan cuisine = Nyonya cuisineという整理がされていました。
プラナカン文化とは
まず「プラナカン文化」について簡単に整理しておきましょう。プラナカン(正確には中華系プラナカンPeranakan Chinese)とは、15世紀頃からマレーシアやシンガポールに移り住んだ中国系移民の子孫を指します。彼らは中国の伝統と、現地のマレー文化を融合させ、独自のライフスタイルを築き上げました。


その文化は衣服、建築、言語、料理など多方面にわたります。女性の伝統衣装「ケバヤ」、鮮やかなプラナカンタイルで装飾されたショップハウス、プラナカン独特の家具や陶器など、シンガポールを代表する文化遺産としても大切にされています。
現在では、プラナカン文化は「シンガポールらしさ」の象徴として観光資源にもなっており、国家の多文化性を体現する存在といえるでしょう。
ニョニャ文化とは
一方で「ニョニャ」という言葉もよく耳にします。「ニョニャ(Nyonya)」は元々、マレー語で女性に対する敬称で、日本語でいえば「おばさん」「奥さん」といったニュアンスに近い言葉です。プラナカン社会において、女性は「ニョニャ」、男性は「ババ」と呼ばれていました。
そこから転じて、「ニョニャ文化」と言えば、特に女性が担ってきた分野、つまり料理や家庭内の文化を指すことが多いようです。
特に有名なのが「ニョニャ料理」。つまり「ニョニャ文化」は、プラナカン文化の中でも料理や生活に根ざした部分を強調した言葉として使われるケースが多いのです。








シンガポール人の意見
ここからは、実際にシンガポール人(マレーシア・チャイニーズにルーツを持つ)に聞いた意見を紹介します。
興味深いことに、「プラナカン文化とニョニャ文化は同じもの」という人もいれば、「ニョニャは女性や料理に特化した言葉」という人もいて、少し意見が分かれました。
同じもの
あるシンガポール人は、「プラナカン文化とニョニャ文化は同じものだ」と答えてくれました。
彼らにとっては、どちらの言葉も同じ文化を指しており、特に区別する必要はないという考えです。日常生活では「ニョニャ料理」と言うし、観光ガイドでは「プラナカン博物館」と書かれている。両方を合わせて一つの文化として捉えているのです。
この立場から見ると、「ニョニャ文化」という言葉は単なる言い換えやバリエーションであり、プラナカン文化の代名詞と考えることができます。
ニョニャは「プラナカン女性」を指し、特に料理文化を指す
一方で別のシンガポール人はこう話してくれました。
「ニョニャはもともとプラナカンの“女性”を指す言葉で、特に女性が受け継いできた料理や生活様式を指すことが多いかな~」
つまり、プラナカン文化という大きな傘の下に、ニョニャ文化という一部分がある、という整理です。建築や陶器などを含めて幅広く語るなら「プラナカン文化」、料理や家庭の雰囲気を語るなら「ニョニャ文化」というのが、この人の見解でした。
この考え方の方が、歴史的な言葉の使い方に近いかもしれません。特に「ニョニャ料理(Nyonya cuisine)」という表現が一般的に使われていることを考えると、「ニョニャ=料理・家庭文化」と結びつけるのは自然な流れといえるでしょう。
まとめ
シンガポール人へのインタビューを通して分かったのは、「プラナカン文化」と「ニョニャ文化」は必ずしも厳密に分けられているわけではない、ということです。
- 同じものと考える人にとっては、両者は互換的な言葉。観光や日常生活での使われ方を見れば、確かにそう感じられます。
- 違いを意識する人にとっては、「プラナカン文化」が全体を指し、「ニョニャ文化」がその中の料理や女性文化に特化している、という区別がある。
どちらの見方も正しく、使う場面や文脈によってニュアンスが変わるのです。シンガポールを訪れた際には、ぜひプラナカン博物館でその歴史に触れつつ、レストランでニョニャ料理を味わってみてください。文化の奥深さを肌で感じられるはずです。