電子タバコは「麻薬扱い」に?シンガポールの新規制が示す本気度

世界中で広がりを見せる電子タバコ(vape)。しかし国によってその扱いは大きく異なります。日本や欧米では一定の規制の下で販売されている一方で、シンガポールでは長年にわたって「全面禁止」の姿勢を貫いてきました。

そして2025年9月、シンガポール政府は電子タバコ規制をさらに強化しました。その内容は驚くほど厳しく、単なる「嗜好品規制」から一歩踏み込み、一部の電子タバコを麻薬と同等に扱う方針が打ち出されています。本記事では、その新規制の中身と背景、旅行者や在住者が注意すべきポイントを詳しく解説します。

記事を書いているのはこんな人
  • シンガポールで妻・子供2人・ヘルパーさんの5人で暮らしています。
  • 現在、現地採用でシンガポール勤務
  • 過去に駐在員を経験
目次

シンガポールの電子タバコ規制の歴史

シンガポールはアジアの中でも極めて厳格な禁煙・禁vaping政策をとる国です。

  • 2010年代前半:電子タバコが世界的に普及し始めた時期。シンガポールは早々にそのリスクに注目し、輸入や販売を禁止。
  • 2018年:法律が改正され、電子タバコの所持・使用・購入も違法化。単なる販売禁止にとどまらず、個人が持っているだけで罰金を科される体制が整いました。
  • 2020年代前半:違法な持ち込みやオンライン販売が続発。若者を中心に「隠れvaping」が広がり、摘発件数が増加。

2025年9月からの新規制のポイント

こうした流れの中で、政府はさらなる強化策を検討。そして2025年9月、ついに「麻薬に準じた扱い」を取り入れる新制度が導入されたのです。

1. etomidate(エトミデート)の「麻薬」指定

新たに注目されたのが etomidate(エトミデート) という薬物です。これは本来、医療用の麻酔薬として使われる物質ですが、近年シンガポールで押収された違法vapeの約3分の1に含まれていることが判明しました。

政府はこれを非常に深刻な脅威と捉え、Misuse of Drugs Act(薬物乱用法) の Class C「管理薬物」に暫定指定しました。
つまり、etomidate入りの電子タバコを所持・使用することは、覚醒剤や大麻の使用と同じ法体系で裁かれることになります。

2. 一般的な電子タバコの罰則強化

従来から禁止されていた「所持・使用・購入」に対する罰金額が引き上げられました。

  • 未成年(20歳未満):初回違反で S$500(約5万円)
  • 成人:初回違反で S$700(約7万円)
    さらに再犯者にはリハビリプログラムの義務化や裁判提起が待っています。

3. etomidate入りvapeへの厳罰化

  • 初回違反:通常の罰金に加え、最大6か月のリハビリテーション
  • 2回目違反:逮捕の上、6か月間の強制監督と薬物検査
  • 3回以上の違反:16歳以上は薬物リハビリ施設(DRC)へ収容、12か月以上の監督付き生活

4. 輸入・販売者への刑罰

最も厳しいのは「供給側」への制裁です。

  • 輸入者:3〜20年の懲役 + むち打ち5〜15回
  • 販売・流通業者:2〜10年の懲役 + むち打ち2〜5回

これは単なる健康政策ではなく、組織犯罪・麻薬取引と同列の扱いであることを意味します。

シンガポールの刑罰としての「鞭打ち刑」は、英語で一般的に “caning” と呼ばれます。
caning:竹やラタン(藤)で作られた太い棒(cane)で臀部を叩く刑罰。
– 法的には judicial caning(司法的鞭打ち刑) と呼ばれます。

なぜここまで厳しいのか?

シンガポール政府がこれほど徹底した措置をとる理由には、大きく3つあります。

  1. 公共の健康保護
    vapeは「紙巻きタバコより安全」と喧伝されることもありますが、長期的な健康影響は不明です。特に未成年者への広がりが問題視され、ニコチン依存や肺疾患リスクが強調されています。
  2. 違法薬物混入の拡大
    今回のetomidateのように、医療用薬物が密かに混入されるケースが急増しています。これは健康被害だけでなく、犯罪ネットワークを拡大させる要因にもなるため、政府は「薬物乱用」と同等に扱う必要があると判断しました。
  3. 国際的な抑止力
    シンガポールは「罰則の厳格さ」で知られる国です。ガム禁止や喫煙ルールと同じように、「電子タバコにも絶対に手を出すな」という強いメッセージを世界に発信する狙いがあります。

在住者・旅行者が気をつけるべきこと

シンガポールに滞在・渡航する人にとって、この規制は非常に重要です。

  • 空港での持ち込みは即アウト:手荷物にvapeを入れていれば、たとえ未使用でも没収・罰金対象です。
  • シンガポール滞在への影響:短期滞在者は国外退去、長期ビザ保持者はビザ取り消しの可能性があります。観光客も「旅行が台無しになる」だけでは済まないことを肝に銘じるべきです。

家族・友人にも徹底してもらう必要がありますね

新規制が示す「シンガポールの本気度」

今回の規制強化は、単に電子タバコを嫌うというレベルではありません。「麻薬と同じ扱いをする」という強烈な姿勢が、シンガポールの徹底した公共政策を象徴しています。

喫煙者やvaping愛好者から見れば極端に感じられるかもしれませんが、シンガポールは「安全で秩序ある社会」を維持するために、一切の妥協を許さない国です。

マレーシアからシンガポールに大麻約1キログラムを密輸した罪で2023年に男性死刑囚の死刑が執行されました。⇒ 大麻密輸で死刑を執行、シンガポール 家族や国連の嘆願聞き入れられず

まとめ

  • シンガポールは2018年から電子タバコを全面禁止
  • 2025年9月からさらに規制を強化し、etomidate入りvapeを麻薬扱い
  • 違反者には罰金、リハビリ、裁判、さらには懲役・むち打ち刑まで適用
  • 旅行者や在住者も例外ではなく、所持だけで厳罰の対象

シンガポールに行く予定があるなら、電子タバコは絶対に持ち込まないように気を付けてください!!!

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